歯科医療の対象となる口腔領域の部位及び歯を表す専門用語のうち、特に歯に関しては、数字化が容易なので早くから数字コードが使用されてきました。
現在広く採用されているいくつかの数字用語のうち、人間の固有感覚に最も適合するものがFDI-ISO方式です。
そして更に全身との整合性を保ち、より詳細な記述を可能とする為、この2桁のコードの前に2、後に1の計3桁が加えられました。この新しい解剖学的部位コードを’ma’という音声信号*を用いて他のコードと区別します。
このコード体系を用いれば全身の全ての部位、組織を表現することも可能となります。
通常の使用には、口腔の歯牙歯槽組織を表す ma の最初の2桁’ma54’を省略し、後の3桁を用います。

ma の1、2桁目

最初の2桁は病理学で使用されている SNOMED*に準拠しています。主な例を下表に挙げます。

maの3、4桁目

歯牙歯槽組織。歯以外の部位を下表に示します。

ma の3、4桁目は ma の中でも最もよく使われます。

maの5桁目

ma の5桁目は、歯肉、エナメル質、象牙質などの 組織の種類を表す数字です。歯牙全体を表す場合 には5桁目を省略し、空白にします。

*SNOMED:Systematized NOmenclature of MEDicine
*音声信号: ma,ta 等の記号は数字用語を識別するために使用される。
識別信号は音声で伝達される可能性を考慮して子音と短母音を用いている。
子音の’m’は空間に、’t’は時間又はエネルギーに関連している。
短母音は舌の高さ、前後的位置を考慮し発音に要するエネルギーの低い順に’a,e,i,u,o’と並べられる。
これら子音と短母音の組合せで数字用語が識別される。コミュニティーヘルスケア第5号参照。

固有感覚に基づく演繹法によって導かれる“ma”

皆さんが歯学部の学生に戻ったと想定して下さい。歯学部の教育はまず歯牙の名前から始まるとしましょう。歯学部に入って来るまでは、学生でも前歯とか上の歯という様な言葉しか知らないはずです。
歯式には色々のタイプがありますが、大学で 765_|、|_123 という歯式を学ばれましたでしょうか。これはかなり視覚に頼った方法だと言えます。 世界に適用する命名法というのは、もっと人間にとって根源的な感覚を基にしたもので、自分でひとつの原則から導き出せるようなものであるべきです。

ではここで、皆さん目を閉じて下さい。腕が机に触れたり後ろにもたれたりしないでまっすぐに座り、、手には何も持たないで下さい。目を閉じたままで聞いて下さい。まず顔を4等分することにします。顔を4等分する縦横2本の交点が口の真中に来るものとして考えて下さい。今までの習慣や情報を全く考慮せず、この顔の4つの部分を数えていきましょう。4つの部分の中で、まず1だと思われる部分を人差指で指して下さい。

指をその部分に置いたまま動かさないで、目を開けて、お互いを比べて下さい。右上を1だと指された方、どのくらいいらっしゃいますか?とても大勢ですね。

各国で同じテストを歯科医師ではない普通の人々を対象にしてみました。この質問をしますと、どこで調べても8割の人が右上を1と感じます。これは人間共通の反応のようです。誰かから教わった訳ではなく、自分自身で答えを出した結果です。残り20%の人はなぜ右上を1としなかったを調べることは、とても良い検討材料になるでしょう。

では、もう一度目を閉じて下さい。いま、顔を4つに分けて、1の部分を示して頂いたのですが、今度は「11」と思われる歯牙を指で指して下さい。
皆さん同じ歯を示されていますね。右上中切歯を「11」と呼ぶと教えるのではなく、学生が自ら答えを導き出すという教育が望ましいと思います。

derivation(デリベーション、演繹的な推論法)とは、最初から教師が「これはこうだ」と答えを教えるのではなく、最初の考えるきっかけとなるヒントを与えて、そのヒントを基に学生が自らの理由づけによって、次々と答えを発見していく、自己発見法なのです。例えば顔のどの部分が1かということが分かれば、「00」はどこか、「01」はどこかということを、全て同じ発想で発見することが出来ます。

次ページ>
Health Care Information Manual 目次に戻る