HPIの基本的理念を説明する上で不可欠な分類の1つに、E1(Education 教育),E2(Environment 環境),M(Management マネージメント) を三角形で結んだ分類があります。教育から期待されるのは歯科医師としてのスキル、環境は人為的に作ると言う意味でセッティング、マネージメントの核心は管理・経営上のルールと言うこともできますから、E1,E2,Mをスキル、セッティング、ルールと置き換えることもできます。

スキルとセッティングは「固有感覚」という基本原則を基に演繹されたものですし、マネージメントルール、例えば情報管理・時間の管理や診療所の環境のメインテナンスなどについてのルールもそれらを設定していく上で、究極的な健康0を基盤にした数字言語による情報管理システムや固有感覚を抜きにしては語れないものです。

これらの原則に共通する「0の概念」について、もう少し説明しておきたいと思います。
「0」は色々な意味を持っています。最も分かりやすいのは「無」という意味で、健康とは「医療の必要性が無い状態」だといえるので「健康」を「0」で置き換えることが出来ます。これが私達の究極的な目標「Goal 0」です。

また時には対象物の全体を「0」で表すことも出来ます。 例えば人体全体を0と定義すると体の各部分を0以外の数字で表すことが出来ます。口腔を「00」と定義すると、各歯牙を「11」というように、2桁の数字で表現できます。

また「0」は基本的な必要条件を意味することもあります。日常の表現でも、「0に戻って考えてみる」というように、基本的な必要条件、前提条件を意味することもあります。このように特定の意味を0で表現して、0の定義との関連においてその他の条件を0以外の数字で表すことによって、色々な内容を表すことが出来ます。

例えば最適な治療姿勢の条件は何であるか、0の条件は何かという時は0を基本的な必要条件として使っているわけです。
「0の概念」を基にしますと、固有感覚に基づいた治療(pd care) の条件と情報管理システム、また物理的ないし肉体的な条件とメンタルあるいは精神的な条件とをつなぐことが出来ます。

0コンセプトは両者の間に橋を架けるものだと思います。

また0をどう定義するかによって、一人の人間の健康状態に焦点を当てることも、人類全体の健康状態を包括的に見ることも可能で、考慮の範囲を自由に広くしたり狭くしたりすることができるのです。
(1988年11月27日 大阪 APLO講演会より抜粋)

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